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音楽は実にさまざまな形態をとります。さまざまな形態をとることによって奏でる音や旋律、トータル的なサウンドはまったく異なったものになります。「音楽」というだけでイメージできるものには幅広いものであり、人と人の共通認識としての「音楽」を構築するにはこの言葉だけでは不十分なのです。

音楽という言葉自体はその行為やすべての音楽を包括する言葉に昇華していて、特定の音楽を指し示す言葉としてはあまりにも広すぎるのです。ですから、音楽を言葉で交わす際のより意味の通る音楽の呼び名が必要だったのです。音楽の中でも細分化し、分けられたカテゴリーにそれぞれユニークな名前をつけることで、同じ音楽でもまったく違うアプローチをしたものを「人に説明する」ことが可能になりました。また、同じ方向の音楽に携わる人間の間でも共通認識としてその「道」を認識することで、より深みを持った創作活動を可能にしたのです。「ジャンル」とは、そのようにさまざまな音楽があふれるなか、「当然」の区分別けとして生まれました。

もともとが音楽はひとつではなく、世界各地でさまざまな経緯をたどって練磨され進化してきたものです。もともとからさまざまな形態、さまざまな楽器、さまざまなサウンド、さまざまな曲があったのですから、それらを整理するのは当然のことです。「音楽」という言葉からすべての音楽が生まれたわけではなく、あくまでも「音楽」という言葉は相対的なものとしてあとからつけられたものなのです。音を用いて創作する行為、またその結果、楽器などを用いて演奏する様子、またそれによって場に流れるサウンドなど、「事象」を表す言葉、また行為を表す言葉として「音楽」という言葉があるのです。ですから、「音楽」という言葉だけではその「曲」単位では何も表せないものなのです。

「ジャンル」とは、ある程度体系がたてられた音楽のかたちです。そのジャンル単位でも掘り起こしていけば奥深い演奏技術やサウンド構成などがあるものなのですが、演奏者間での共通認識として、また演奏者と聴衆の間をつなぐ言葉として、認識としての「ジャンル」とがあるのです。例えばフルオーケストラでのクラシックコンサートとトリオ編成のジャズではまったく違う音楽を奏でることになります。今記したような説明の仕方をすれば、人はその音楽に対してある程度のイメージがつけられるものです。「クラシックコンサートに行きたかったのに、ジャズのコンサートに間違えてきてしまった」ということは、前述の説明を行えば発生しようのない間違いです。また、「どのような音楽なのか」という質問をされたときにも、「ジャンル」をうまく用いて説明すれば相手にいち早くその音楽を伝えることもできるでしょう。「ジャンル」とは、そのように人と「その音楽」を共有するための言葉であるのです。けっしてその音楽「そのもの」を表すような言葉ではなく、相対的に捉えたその音楽の立ち位置を表すだけであって、その音楽の「良し悪し」が語れるようなものではありません。

個々の音楽は無限の可能性を秘めていて、それは実際に聴いてみなければ、体感してみなければ実感としてはわからないものなのです。

 

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