豊富なメニューよりも飽きない一品を

飲食店が私たち利用者に対して訴求する「ポイント」として、「メニューの多さ」などがよく挙げられます。それは「宴会」や「パーティー」など、沢山の人が集まることが前提の「居酒屋」などの飲食店では重要なことなのかもしれません。ですが、「純粋に食事を楽しみたい」と考える人にとっては、「どうでもいいこと」かもしれません。

何回か同じ飲食店に通えば、「全メニューを制覇する」ということは案外簡単なのです。飲食店のメニューは限られているのですが、利用客がその飲食店を利用する「未来の機会」は膨大にあるからです。人によっては「その飲食店の数あるメニューの中からお気に入りを探す」ということに楽しみを覚える人もいることでしょう。そのような人に対して「豊富なメニュー」はとても有効なのですが、「すべて網羅してしまった」人に対してはもはやチカラを失います。もし、「すべて頼んだけどどれも中途半端だった」ということになってしまうと、そのお客さんはもうその飲食店に対して「興味を失う」ということになります。「興味がない店」には行く理由がありません。その時点で、その飲食店は「リピーター」をひとり失うことになるのです。

ですから、飲食店に求められる姿勢は、料理の味に「こだわりぬく」ということです。「一見さん」だけを永遠に相手にできるわけではないのですから、提供した料理の味に惚れ込んでもらえるように死力を尽くすということが求められるのです。そのような姿勢は必ず料理の「味」に反映されることになります。多数のメニューを揃えるのはお客さんにとっては「華やか」に感じられることではあるのですが、それだけではいけないのです。それだけでは「お客さんは満足しない」というわけです。

ですから、「沢山の料理でそのように味の追求ができない」という場合は、「特定のメニューに絞る」ということのも重要です。ラーメン屋などは特にそうです。ラーメンと餃子、ラーメンとチャーハンなどは王道の組み合わせであり、利用客にとっては同時に試してみたいメニューであるのかもしれません。ですが、それらの「ラーメン以外のメニュー」で十分なクオリティが出せないのであれば、あえて「出さない」という選択肢も考えられるのです。そうすれば、クオリティの低い、つまり「あまりおいしくない」メニューを提供しなくてもすむのです。

「選択と集中」という言葉があります。これは経営を考える上での重要な考え方ですが、「どのようなメニューを揃えるか」ということはそのままこの言葉を当てはめることができます。「居酒屋」であればいいのです。「いろいろな人が楽しく過ごせるために、そこそこの料理を揃えていればいい」ということであれば、それでいいのです。ですが「ラーメン屋」でパーティーをすることは出来ません。その飲食店に訪れる人のニーズは「パーティー」ではないのです。「また食べたくなる一品」を求めて訪れるわけです。そのような人に対してバラエティ豊かな中途半端な料理を提供しても、何もいいことはないでしょう。またお客さんも「中途半端なものは食べたくない」わけです。飲食店の規模もさまざま、方針もさまざまです。「何が正解」ということはないのです。

 

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